臨床工学技師の仕事とやりがい

医療事故を起こさないシステム

腎臓病の治療について

腎臓を患っている方へ

腎臓を患っている方へ

「臨床工学技士」になって欲しい

私は、13歳、中学1年の時に腎臓病(IgA腎症)が見つかり、それから約1年間入院しました。

退院してからも、度々調子が悪くなって、親や友人に迷惑をかけたりして、「こんな身体要らない。なんで自分ばっかりがこんな目に・・・」と、ずっと下を向いて生きてきました。当然、将来のこと、特に「何の職種に就くか」なんて、どうでもいいって思っていました。

「どうせ自分は病気なんだし、社会のお荷物なんだし、大した仕事なんてできやしない。自分がどんな職業を目指したって、それになれるわけないんだから、考えるだけ無駄」そう思っていました。

そんな私が、高校1年の夏、進路希望の欄に書いた職業が「公務員」。これは、当時公務員として働いていた父が、「何も思い浮かばないなら、公務員って書いておけ。待遇も昔と違っていいしな」と言っていたから、書いただけでした。特に公務員になりたい、と思ってはいませんでした。

そんな私が、初めて現実的になりたい、と思った職業は、「薬剤師」でした。これは、自分が持病を抱えているということで、医療系の勉強をしたい、と思ったからです。ただ、「医療系」と言う事しか決めておらず、「薬剤師」と考えたのが、大学の偏差値を見て、自分の入れそうな大学、なれそうな職業が、薬剤師しか思いつかなかったからです。

しかし。高校2年の時、ようやくやりたい職業が見つかりました。それが「臨床工学技士」です。

臨床工学技士の業務は、法律上では「生命維持管理装置の保守点検・操作」と位置づけられていて、「生命維持管理装置」とは、人工呼吸器・人工心肺など色々ありますが、7割の臨床工学技士が携わる現場が、「人工透析施設」です。人工透析施設で、透析装置の操作・保守点検を主に行いますが、向き合うのは機器とだけではありません。

医療機器の向こう側には、必ず患者様がいます。医療機器に携わるということは、その先の患者様と向き合う、と言うことだと私は思っています。

・・・前置きが長くなってしまいました。

私が何故臨床工学技士になりたいと思ったか、と言う理由。それは、

「医療従事者と患者」と言う立場だけではなく、「患者同士」として向き合う事ができる

そう思ったからです。私が中学1年の時、入院中に思った事。それは、「患者の気持ちは、患者にしかわからない」と言うことでした。

水分制限をしたことのない人が、「1日600mlの水分制限」と言われても、「ペットボトル1本以上飲めるんでしょ?余裕でしょ。俺そんなに飲まないし」と言います。しかし、実際計ってみた事のないだけで、普段でも案外飲んでいる事に気づかないだけなのです。

また、しょっぱいものを食べた日は、倍ぐらい飲んでいるんだ、と言うことも、実際に患者になって計って飲んでないと気づかない事です。

毎日毎日、暑くて喉が渇く日も、しょっぱいものを食べた日も、変わらず1日600mlを毎日続ける事は、とても大変な事なのです。それは、やってみた事の無い人には、決してわからないことでしょう。

私は、その辛さ、苦しみが解ります。水分制限、食事制限。透析患者様が行ってきている事は、私もやってきました。時々、自己制御が利かなくなって、バカ食い、バカ飲みをした事もあります。

身体に悪い事だって事は解っていました。自分の寿命を縮める事だって事も重々承知していました。そんな事は頭では解っているんです。それでも、抑え切れない時があるんです。その後は、誰に何も言われなくても、「食事制限が大事なのはわかってるのに、できなかった・・・」と、自己嫌悪に陥ります。

透析治療に携わっていると、「多分自己制御が利かなくなったんだろうな、終わり無い制限生活がやりきれなくなったんだな」って思うような状態の患者さんがいます。その方(仮にAさんとします)は、普段は制限をちゃんとしている人で、タガが外れてしまうような事は、年に数度しかありません。

そのAさんに対し、大抵の臨床工学技士は、「こんなに水分摂って!身体に負担かけるよ~」「どうしてこんなに体重が増えてるの?」と、大騒ぎします。こうなると、Aさんも、申し訳なさそうに、貝のように口を閉ざしてしまい、何も情報を得る事ができなくなるばかりか、Aさんは自己嫌悪に陥ってしまいます。

しかし、私なら「たまには自分の好きなもの、好きなだけ食べて飲みたい日だってあるさ~♪どんな美味しいもの食べてきたの?」と、Aさんがこれ以上自己嫌悪に陥らないように、努めて明るく、軽い調子で言います。

そうすると、「いやぁ、久々に遠方から子供と孫が来てね、お寿司頼んで食べちゃってさ、のどが渇いて水を結構飲んじゃったんだよね~。醤油はあまりつけなかったんだけどねぇ・・・」と話してくれます。

私は、「そっかぁ、お孫さんの顔見れたら、お寿司だって頼んじゃうよね~♪お寿司は、醤油だけじゃなくて、素飯にも塩分がたくさん入ってるから、のど渇いちゃうんだよね。僕がお寿司食べたい時はね、素飯じゃなくて普通のご飯を握って、買ってきたネタをのっけて、自分でお寿司作っちゃうんだ。そうしたらあんまりのど渇かないで済むし、味もそんなに変わらないよ~」と返します。

Aさんは、「へぇ~、そうなのかぁ~、素飯にそんなに塩分あるんだなぁ~。今度家内に頼んで、素飯じゃない寿司を作ってもらうかなぁ~!」と笑顔で話されました。

このように、私は、Aさんとの何気ない雑談の中で、「どうしていつもしっかり制限ができているAさんが、今回に限って水を飲みすぎたのか」と言う情報を引き出し、それに対し、「こうしたらそんなに塩分を摂ることなく、のども渇かない」と言う情報をAさんに与える事ができました。

こういう風に私がAさんと話を進めることができたのも、「自分がお寿司を食べて、のどが渇いた経験」と、「どうしてのどが渇いたのか調べた経験」と、「素飯を普通のご飯に変えたら、そんなにのどは渇かなかった」と言う3つの実体験があるからこそなのです。

私が腎臓病と闘ってきた中で得た実体験で、Aさんに知識を与える事ができました。

それのない健康な身体の臨床工学技士は、今まで制限できていた患者様が、何故急にバカ食いバカ飲みしたのか、理由もわからないので、体重が増えてきたことへの注意喚起に終始してしまい、その結果、Aさん側から情報を得る事はできませんでした。

つまり、腎臓病の経験がある私にしかできない事が、透析施設の業務、臨床工学技士の業務にはあったのです。それは、私の最大の武器になりました。

もちろん、「私は腎臓病です」なんてプラカートを掲げて歩くわけにはいかないので、私が腎臓病と知らない患者様も多くいました。しかし、今回のAさんの例のように、必ず「ここだ!ここで自分の体験を話すんだ!」と言うタイミングが存在します。その時に、自分が闘病生活の中で培ってきた「患者としての知識」が、他の患者様の役に立つ日がきっと来ます。

私のように、「腎臓病でも、いや、『腎臓病だからこそ』、臨床工学技士として透析業務に関われば、こんなに世の中の為になるんだ」と言うことを、このサイトを読んでいる腎臓病の方にも、是非感じて欲しいのです。

腎臓病に限らず、「病気を持っている」と言うことは、社会にとっては必ず不利益に働き、他の面では全く問題がなくても、就職活動がうまくいかなかったり、運よく就職しても周りから色々言われたりすることが多々あります。それ故に、「病気になんてならなきゃ良かった」と感じる事もしばしばだと思います。

その中で、唯一自分が「病気を持っていたお陰でプラスに働いた」と思った事。それが「臨床工学技士として、患者として、透析患者様に接することができる事」だったのです。

今この文章を読んでくださっている方に、もし、腎臓病をお持ちの中学・高校生の方がいて、自分の将来を決めかねてる、というのなら、是非「臨床工学技士」と言う職業を調べてみてください。

少しでも興味を持ったのなら、地元の臨床工学技士要請校で、おそらく「体験入学」と言うのをやっていると思うので、そこで、色々な医療機器に触れてみてください。そして、「臨床工学技士になりたい」と思ったなら、その道に向かって真っ直ぐに歩いてきてください。

このサイトをきっかけにして、1人でも臨床工学技士に興味を持ってくださり、将来の臨床工学技士が誕生するのであれば、これほど嬉しい事はありません。