臨床工学技師の仕事とやりがい

医療事故を起こさないシステム

腎臓病の治療について

腎臓を患っている方へ

臨床工学技士が携わる医療行為

人工透析

腎不全になって、尿の出なくなった患者さんは、色々な弊害が起きてきます。「尿の排出」は、色々なことをしてくれているのです。例えば、解り易いものだと、「水分量の調節」。体内の水分を常に一定に保つ為に、多かったら尿を出し、少なかったら脳が指令を出して「のどが渇いた、水が飲みたい」と思うようになります。

腎臓が悪くなると、体内の水分量が多くても、尿が出ないので、体液が多めになってしまうのです。この他にも、尿を出す過程で色々なイオンを再吸収したり排出したりして、身体の酸性・アルカリ性のバランスを保ったりもしています。これらが、腎臓が悪くなるといっぺんにできなくなるのです。

尿が出なくなって、体液が多くなると、血液量も増えますから、心臓に負担がかかったり、血圧が高くなったり、心不全にもなります。また、血液中の毒素も尿と一緒に出て行くのですが、それも出せなくなります。この「毒素」が身体に回ってしまうと、尿毒症という症状がでてきます。(意識混濁、知力減少など)

これらを改善するためには、尿を出す、と言う行為の代わりを行うことが必要です。つまり、血中の水分と毒素を外へ排出してやればいいわけです。それを人工的に行うことが人工透析です。基本的には、1週間に3回(月水金・火木土と言う感じ)4時間程度行います。

しかし問題はあります。1週間、腎臓と人工透析を比べてみましょう。生体腎(普通の腎臓)だと、1週間に24(時間)×7(日)=168時間かけて行う血液浄化を、人工透析は4(時間)×3(日)=12時間で行う為、どうしても無理が出てしまいます。

足が吊ったり、血圧が下がったり、頭が痛くなったり、色々な症状が出たりします。透析を行う事によって起こる、色々な症状の事を、「不均衡症候群」と言ったりします。このように、人工透析にも欠点というか、やはり医学の限界があります。

しかし、これを完全に治す治療法があります。「腎臓移植」です。これを行うと、腎臓の機能は正常になり、免疫抑制剤と言う薬を飲むだけでよくなり、食事制限・水分制限などがなくなります。

ただ、他の先進国と比べて、日本は「脳死」の際の臓器提供が極めて少ないので、血縁者などの「生体腎移植」しか選択肢はなく、その分だけドナーとなる腎臓が少ないので、なかなか透析と同等の普及がなされてないのが現状です。

また、一度移植をすれば一生大丈夫か、と言うとそうでもなく、移植された腎臓の寿命は、平均して12年ほどと言われています。(あくまでも「平均」です)

例えば、血縁者で腎臓を提供した兄と、提供された弟がいたとしましょう。手術は成功しましたが、なんらかの影響で、この移植された腎臓は5年しか持ちませんでした。こうなるとこの兄弟は、一般的には次のようなことを思います。

兄:「12年持つって言われたのに5年しか持たなかった・・・俺の腎臓が悪かったんだ」

弟:「せっかく兄ちゃんが腎臓くれたのに、5年しか持たせられなかった・・・俺のせいだ」

こうやって、兄弟がそれぞれ、「自分が悪い」と思い込むのです。そして、この兄弟が出す結論は、「腎臓移植なんてしなけりゃよかった」と、こうなります。

もちろん、うまく行く兄弟や他の血縁者達もいるでしょう。腎臓移植という技術に感謝している方も多いでしょう。しかし一方で、こういう話が現実にあるのです。

私も、腎不全が悪化し、人工透析しなくちゃならないぐらい悪くなったらどうするか、と言う話も家族間でした事があります。そこで、妹が「私の腎臓が合うんだったらあげるよ」と言ってくれています。涙が出るほど嬉しいです。

しかし。自分は、妹の腎臓をもらってまで生きる価値があるんだろうか。腎臓をもらっても、どうせ一生はもたないのなら、妹に対して申し訳ない気持ちになるんじゃないか。そうも思うのです。

結局、どうするのかは、まだ決めていません。まだ何年かある。そうやって、肝心な話題から逃げているだけなのかもしれません。

・・・話が逸れました。人工透析の説明に話を戻したいと思います。

透析は、人工透析装置という機械で行います。

透析装置は、簡単に言えば、チューブを機械に取り付け、そのチューブをしごくポンプと、色々な患者監視装置で成り立っています。透析は、まず患者様の腕に2本の針を刺します。

そして1本の針にチューブを接続し、そのチューブをローラーポンプに取り付けます。ローラーポンプが回ると、血液が引っ張られます。(脱血といいます)引っ張った血液を、「ダイアライザー」と呼ばれる、何万本ものストロー状の束になったものに通します。

一連の流れを書くと、血液が針を通って引っ張られ、接続されたチューブを通り、ローラーポンプで血液を引っ張り、ダイアライザーを通って血液がきれいになり、そのままもう一方の針から戻されるという感じです。

人工透析の治療で、臨床工学技士のする仕事は、「人工透析機の準備」(機器には自己診断機能がついています)もしこの「自己診断」の時点で異常があった場合、かなり焦ります。

どこに異常があるかすぐに判断できない場合は、その機械で透析をするはずだった患者さんを、別の場所に移します。そして、臨床工学技士が午前中の透析の間に直したり、業者を呼んだりして、午後には使えるような状態にします。

「透析の準備ができた患者様に針を刺す」(これが一番緊張します・・・)その後は、先程も言った通り、透析を受けている患者様は体調が崩れやすいので、声かけをしたり、血圧を測ったりして、様子を見ます。

また、透析中には、色々な項目を監視して、それが異常値になった時に警報を鳴らす必要があります。その、「何の数値が」「どれぐらいの値になった時に」警報を鳴らすか、という設定をするのも、人工透析業務の一つです。

その警報が鳴った時、「何故なったのか」という原因をきちんと把握し、対策をとります。最近、透析中の事故がニュースでやっていました。

「警報が鳴ったが、看護師が観察したところ、特に異常は見当たらなかったので警報を解除した。その数分後、再び警報がなり、別のスタッフが確認したところ、患者に刺さっている針が抜け落ちていて、血液が漏れている状態であり、その患者は出血多量で亡くなった」

「何故??」と私は思います。何が「何故??」なのか。警報には必ず「意味」があります。最初の警報の時、間違いなく針が抜け落ちていた、または抜け落ちかけていたのでしょう。その異常を、機械は知らせてくれていたのです。

しかし、最初のスタッフは、それを見逃した。警報は、まるで無かったかのように処理され、数分後、別のスタッフが確認するまでの間に相当量出血し、亡くなった・・・

せっかく機械が教えてくれたのに、それを無視して「なんともなかった」と、思い込み、手動で警報を解除してしまったのでは、警報をセットしている意味がなくなります。先程も言いましたが、「警報」には理由があります。その理由を一つ一つ追っていけば、針が抜け落ち(かけ)た事は発見できたはずです。

・・・こんな事故の無いように、患者様の状態を常時監視し、機械の警報には敏感に反応して、警報の鳴った原因を調べる。これが、透析業務の一番大切なところです。

また、透析業務の多くには、「看護師だから」とか、「臨床工学技士だから」とか、そういう区分けはありません。臨床工学技士と看護師の仕事がオーバーラップしており、それぞれ同じ仕事をする事が多いです。

上で伝えた、患者監視装置の操作や警報への対処は看護師でもしますし、透析中の患者さんの血圧測定は臨床工学技士だってします。看護師と臨床工学技士、もちろん医師も、「人工透析をしている間の患者様の安全を守る」と言う点では、皆同じ目的を持って仕事をしているわけです。